君となら ~漁師の村<アイリス>~Ⅲ
クリスの病室にロードとレッドの二人は来ていた。
医者のカイルの申し出を受け、ロードは村の宿<お魚パラダイス>にチェックインし、荷物を部屋に置くと、再びクリスを訪れていた。
クリスのベッドの隣には簡易テーブルが置かれ、その上には所狭しと素晴らしい料理が並べてある。丸椅子も二つ用意されていた。
「いいなぁ。そのお魚、おいしそうだなぁ」
「うん!すっごくおいしいよ!でもクリスはダメだからねっ!」
魚のフライを口いっぱいに頬張るレッド。クリスは「わかってるよ」と微笑むと、病人食用のオートミールを一口食べる。
「お前のだって、案外いけたぜ?」
「うん。おいしいよ。でも・・そっち、楽しそうだな~と思ってさ」
言うと、スプーンですくって一口。ロードはサーモンサラダをつつきつつ、「まぁな・・」と相槌を打った。
確かに、ロードとレッドの食事は華やかだった。魚のフライから始まり、サーモンのサラダ、エビとホタテのグラタンに魚介類のパスタなど。ビールも勧められたのだが、それはさすがに断っていた。病人のクリスの前では飲めない。
「クリスはそれでも、まだ熱があるんだから。安静にしてなきゃダメなの!」
「はぁ~い。わかりました。レッド先生」
苦笑し、クリスは半分ほど残っているオートミールのお椀をサイドテーブルに置いた。すかさず、ロードがチェックする。
「・・お前、もういいのか?」
「ああ。もうお腹いっぱいだよ」
食後の薬を飲み、ベッドの背にもたれるクリスを、ロードは心配げに見つめた。
「別に、気持ち悪いとかは無ぇか?」
「無いよ」
微笑み、首を振るクリスの額に、ロードは手を伸ばした。昼間よりも熱くは無いが、それでもまだ少し辛そうな顔をしている。
「レッドが食べたら、俺たち行くから」
「ううん。いてくれていいよ。そのほうが、安心するし」
「休んだほうがいいって」
ロードの大きな手の重みを額に感じながら、クリスは瞳を閉じ、そして言った。
「ロードの手って・・・なんか・・気持ちいいな・・・」
「えっ・・・」
驚き、目を見張るロード。慌ててクリスの額から左手を剥ぎ取る。
クリスも自分の口から出た言葉に驚いていた。
「あっ・・ちが・・今のは、なんていうか・・・」
「わ・・分かってるって。ダイジョブだって!」
(何がダイジョーブなんだよ!)
心の中で毒つき、ロードは前髪を掻きあげた。
何も大丈夫ではないことをロード自身は気付いていた。
いつの間にか、クリスを『女』として扱っていたことにロードはひどく後悔していた。
(クリスは俺がまだ気付いて無いって思ってる。それなら、そう思わせとかなきゃならねぇ。クリスの口からホントのことを聞くまでは・・・)
気まずい沈黙の二人の耳に、カチャカチャと食器のぶつかる音が響く。
ロードが振り返り、見ると、レッドが口に一杯食べ物を頬張りながらせっせと後片付けをしていた。
「ほほ、ほーど。キレーになっただぼ?」
「そうだな。キレーになったな」
何を言ったのかの推測は容易についた。ロードは笑いをかみ締める。
(考えたって、仕方無ぇか・・・。なるようになる、かな)
赤い髪の少年と正体を隠している女魔導師クリス。この二人の接点はいまだに分からない。が、今はまだそれがどうでもいいようにロードには思えてきた。
やっと口の中の物を飲み込んだレッドにロードが声を掛ける。
「んじゃ、レッド。宿に帰るか」
「うん!クリス、今日はたくさん寝るんだよ?」
「わかったよ」
薄く微笑み、クリスはベッドに横になった。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
テーブルを片付けたロードとレッドが部屋を出たのは、クリスの部屋の窓から半月が見えているときだった。
医者のカイルの申し出を受け、ロードは村の宿<お魚パラダイス>にチェックインし、荷物を部屋に置くと、再びクリスを訪れていた。
クリスのベッドの隣には簡易テーブルが置かれ、その上には所狭しと素晴らしい料理が並べてある。丸椅子も二つ用意されていた。
「いいなぁ。そのお魚、おいしそうだなぁ」
「うん!すっごくおいしいよ!でもクリスはダメだからねっ!」
魚のフライを口いっぱいに頬張るレッド。クリスは「わかってるよ」と微笑むと、病人食用のオートミールを一口食べる。
「お前のだって、案外いけたぜ?」
「うん。おいしいよ。でも・・そっち、楽しそうだな~と思ってさ」
言うと、スプーンですくって一口。ロードはサーモンサラダをつつきつつ、「まぁな・・」と相槌を打った。
確かに、ロードとレッドの食事は華やかだった。魚のフライから始まり、サーモンのサラダ、エビとホタテのグラタンに魚介類のパスタなど。ビールも勧められたのだが、それはさすがに断っていた。病人のクリスの前では飲めない。
「クリスはそれでも、まだ熱があるんだから。安静にしてなきゃダメなの!」
「はぁ~い。わかりました。レッド先生」
苦笑し、クリスは半分ほど残っているオートミールのお椀をサイドテーブルに置いた。すかさず、ロードがチェックする。
「・・お前、もういいのか?」
「ああ。もうお腹いっぱいだよ」
食後の薬を飲み、ベッドの背にもたれるクリスを、ロードは心配げに見つめた。
「別に、気持ち悪いとかは無ぇか?」
「無いよ」
微笑み、首を振るクリスの額に、ロードは手を伸ばした。昼間よりも熱くは無いが、それでもまだ少し辛そうな顔をしている。
「レッドが食べたら、俺たち行くから」
「ううん。いてくれていいよ。そのほうが、安心するし」
「休んだほうがいいって」
ロードの大きな手の重みを額に感じながら、クリスは瞳を閉じ、そして言った。
「ロードの手って・・・なんか・・気持ちいいな・・・」
「えっ・・・」
驚き、目を見張るロード。慌ててクリスの額から左手を剥ぎ取る。
クリスも自分の口から出た言葉に驚いていた。
「あっ・・ちが・・今のは、なんていうか・・・」
「わ・・分かってるって。ダイジョブだって!」
(何がダイジョーブなんだよ!)
心の中で毒つき、ロードは前髪を掻きあげた。
何も大丈夫ではないことをロード自身は気付いていた。
いつの間にか、クリスを『女』として扱っていたことにロードはひどく後悔していた。
(クリスは俺がまだ気付いて無いって思ってる。それなら、そう思わせとかなきゃならねぇ。クリスの口からホントのことを聞くまでは・・・)
気まずい沈黙の二人の耳に、カチャカチャと食器のぶつかる音が響く。
ロードが振り返り、見ると、レッドが口に一杯食べ物を頬張りながらせっせと後片付けをしていた。
「ほほ、ほーど。キレーになっただぼ?」
「そうだな。キレーになったな」
何を言ったのかの推測は容易についた。ロードは笑いをかみ締める。
(考えたって、仕方無ぇか・・・。なるようになる、かな)
赤い髪の少年と正体を隠している女魔導師クリス。この二人の接点はいまだに分からない。が、今はまだそれがどうでもいいようにロードには思えてきた。
やっと口の中の物を飲み込んだレッドにロードが声を掛ける。
「んじゃ、レッド。宿に帰るか」
「うん!クリス、今日はたくさん寝るんだよ?」
「わかったよ」
薄く微笑み、クリスはベッドに横になった。
「おやすみ」
「ああ、おやすみ」
テーブルを片付けたロードとレッドが部屋を出たのは、クリスの部屋の窓から半月が見えているときだった。
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